腹黒いの「腹」は、「腹が立つ」「腹が太い」などと使われるように「感情」や「考え」の意。
「黒い」は「黒」という色の暗く陰険な印象から、「汚い」「よこしまである」を表す語で、腹(考え)が黒い(よこしまである)ことを「腹黒い」という。
腹黒いの語源は上記のように単純なものだが、インターネット上では、魚の「サヨリ」に由来するという俗説が流布されている。
この説は、サヨリを捌くと美しい外見と違って腹が黒いことからや、サヨリは群れで泳ぐ魚で、集団で悪巧みをする人をサヨリにたとえて「腹黒い」と言うようになったというものである。
サヨリが「腹黒」と呼ばれていなければ「腹黒い」という形容詞は成立しないが、サヨリの別名・古名・地方名に「腹黒」はない。
また、「腹黒い(腹黒し)」は『蜻蛉日記』(974年頃)から見られる語だが、この時代に、ヨリトウオ(サヨリの古名)の腹の黒さについて書かれたものもない。
現代まで、腹黒い人を「サヨリ(ヨリトウオ)のような奴だ」とたとえた例もなく、ここまででたらめな説は珍しい。