ハマナスの語源には、「ハマナシ(浜梨)」の訛り説と、文字通り「浜辺のナス」の意味とする説がある。
「ハマナシ(浜梨)」の訛り説は、夏から秋にかけて赤く熟す果実を食用とし、その形が梨に似ているところから「浜辺の梨」と呼ばれており、ハマナスは東北地方の海岸に多く、東北では「シ」を「ス」と発音することから、「ハマナシ」が「ハマナス」に変化したというものである。
この説で問題なのは、古くから文献には「ハマナス」の形で現れ、「ハマナシ」の形が見られるようになるのは、この語源が通説となってからという点である。
現在でこそ長いナスが出回っているが、江戸時代には丸い形のものが好まれており、古くから文献に「ハマナス」として現れること、「トマト」が「赤茄子」と呼ばれていた例もあることから、浜辺のナス説の方が有力に思える。
しかし、トマトはナス科なのでナスにたとえられても不思議ではないが、多くある丸い野菜や果物の中で、ナスにたとえたという点が疑問で、これは浜梨の説にもいえることである。
たとえているとすれば、果実の形が丸いことだけではなく、味も梨に似ていることからではないだろうか。
「ハマナシ」が訛って「ハマナス」となった以降に文献に登場するようになったとすれば、「味や形が梨に似た浜辺のもの」の意味と考えられる。