モグラは、土の中に潜ることから「もぐる(潜る)」が変化したとする説があるが、動詞「もぐる」は比較的新しい語で、現在の「モグラ」の語形から考えられた俗説である。
モグラの古い語形は、平安時代には「ウゴロモチ」「ムグロモチ」「ウグルモチ」などで、他にも、第一音節が「ウ」か「ム」、第二音節が「グ」か「ゴ」、第三音節が「ル」か「ロ」の組み合わせでいくつかある。
平安時代の辞書には「うぐろもつ」「うごもつ」など、土を盛り上げる意味の動詞があり、モグラが穴を掘って土を盛り上げることからの命名と考えられる。
中世には「ウグロモチ」が一般的な語として使われていたが、文化の中心が江戸に移り、江戸の地方語であった「ムグロモチ」の語系が一般的となった。
1603年の『日葡辞書』には「モチ」が抜けた「ムグラ」の語も見られ、江戸時代後期になって「モグラ」が見られるようになる。
「ムグラ」から「モグラ」へ音変化する際、動詞「もぐる」が影響したことはある程度考えられるが、「もぐる」が語源で「モグラ」になったわけではない。
漢字の「土竜」は、土を掘った跡のトンネル部分が竜のように見えるため付けられたものである。
ただし、中国で「土竜」は「ミミズ」を指しており、日本に伝わった際に誤って「モグラ」に「土竜」が当てられたといわれる。