「名残」は当て字で、名前が残るという意味が語源ではない。
なごりに漢字の「余波」を当て、波が打ち寄せたあとに残る海水や海藻も意味するように、「なみのこり(波残り)」が短縮し変化して出来た言葉である。
そこから、余韻や影響など、何かの事柄の後に残るものを「なごり」と言うようになった。
「なごり」が波によって残ったものではなく、ある事柄が過ぎたあとに残る余韻や影響を表すようになったのは、『万葉集』にもその例が見られることから、奈良時代以前と考えられる。
人との別れを惜しむ意味で「なごり」が用いられた例は平安時代以降に見られ、「名残惜し(い)」といった形容詞も、その頃から見られるようになる。