トリは、元々、寄席の用語。
寄席の興行収入は、寄席の経営者側と芸人のギャラに分けられる。
そのギャラは、最後に出る主任格の真打が全て受け取り、芸人達に分けていた。
演者の最後を取る(真を打つ)ことや、ギャラを取るところから、最後に出演する人を「トリ」と呼ぶようになった。
上記の意味から、「トリ」を漢字表記する場合、本来は「取り」である。
しかし、トリになる人は主任格であることから、「主任」の漢字が当てられていた。
現在ではギャラの受け取りに関係なく、最後に出演する人を「トリ」と呼ぶ。
最初に演じる芸人は、新人で「まっさら」の意味から「サラ」、「はじめ」の意味で「ハナ(端)」などと呼ばれる。
また、ギャラは「割り振る(分配)」ところから、「ワリ」と呼ばれる。
寄席の最後を務めるトリは主役であるため、普通は自分の取り分を多くして、残りを他の芸人に分配する。
しかし、入りの少ない時は、身銭を切って配る真打もいたという。
トリの他に、「大トリ」という言葉もある。
これは、NHK紅白歌合戦の紅組と白組のように、それぞれトリがいる場合、その一方の人は最後を締めくくるだけでなく、全出演者の最後になることから、「大」を冠して「大トリ」と呼ぶのである。