食パンの語源には5つの説がある。
正確なことは分かっていないが、それぞれの説に関係する言葉の使われ方や背景などから、以下の順に有力と考えられる。
1.「本食パン」の略。
第二次世界大戦以前のパン職人は、食パンを「本食」と呼んでおり、イギリス系の白パンを指していた。
本食パンは、西洋料理の「もと」となる食べ物のパンという意味である。
2.「主食用パン」の略。
日本にパンが伝わった当時はイースト菌がなかったため、食パンのように大きく膨らむパンは作れず、菓子パンが主流となっていた。
1862年、イギリス人のパン職人ロバート・クラークが横浜で創業した「ヨコハマベーカリー」で山型食パンが作られた。
これが、菓子パンではなく、米のように主食として食べられるパンということから、「食パン」と呼ばれるようになった。
3.「消しパン」ではなく「食べられるパン」の意味。
パンは食べる以外に、デッサンの消しゴム代わりとしても使われており、その「消しパン」と区別するために、食べられる食用のパンという意味で「食パン」と呼ぶようになった。
パンが食べるものであること以上に、消しゴムの役割をするものという認識が広まっていなければ成立しない説のため、考え難い。
4.「フライパン」ではなく「食用のパン」の意味。
フライパンも「パン」と呼び、キッチンには2つのパンが存在することから、「食用のパン」として区別するため、「食パン」と呼ぶようになった。
この説では、他の食用パンが「食パン」と呼ばれない理由が明確でない。
5.酵母に食べられたパンの意味。
ふっくらと膨らんだ食パンには隙間ができるため、その穴を酵母に食べられたものと見て、「食パン」と呼ぶようになった。
酵母を使っているために隙間ができることは、客ではなくパン職人が知っていることなので、お店による命名となるが、「食べられたもの」として売り出すはずないため、この説も考え難い。