父は、上代に男子を敬っていった「ち」を重ねた語。
「祖父」の「オホヂ」や「叔父・伯父」の「オヂ」など、男性の敬称の中でも男親に近い存在に「ち」が使われており、『古事記』にある「麻呂賀知(まろがち)」は「麻呂が父(私の父)」と解釈できることから、「ち」単独で「父」を表すこともあったと思われる。
「ちち」は母音交替によって「てて」となり、幼児語の「とと」にもなって、「ととさま」「とっつぁん」「とうさん」という語形にまで転じている。
男子の敬称「ち」の語源は、「ち(乳)」や「ち(血)」の意味など諸説あり、威力のある存在から心霊を称える「ち(霊)」の意味が有力とされているが未詳。
漢字の「父」は、「おの」+「又(手)」の会意文字で、手に石斧を持って打つ姿を示している。