べっぴんは「普通の品物とは違う」「特別によい品物」の意味として使われていた語で、江戸時代の歌舞伎脚本にも「別品」の表記が見られる。
本来、「別品」は品物だけを指す言葉であったが、優れた人物も意味するようになり、女性に限らず男性にも用いられた。
やがて、女性の容姿のみを指すようになり、それに伴ない、高貴な女性を意味する「嬪」が当てられ、「別嬪」とも書かれるようになった。
明治初期になると、美人を意味する「べっぴん」には、「別嬪」の漢字表記が多く用いられるようになった。
当て字好きの夏目漱石は「別嬪」を使い、二葉亭四迷は初期頃の作品で「別嬪」を用いていたが、後に「別品」を使うようになるなど、作家によって使う漢字は様々である。
なお、美人の意味では「別嬪」と「別品」の二通りの表記があるが、特別によい品の意味では「別品」のみである。