乾杯は「杯(盃)を乾す」と書くように、本来は、酒を飲み干すことを意味する。
昔は、獣角や貝殻などの不安定な酒器を用いたことから、一気に飲み干すことが「乾杯」であった。
日本の宴席などで行われる乾杯は、1854年、イギリスのエルギン伯爵が、晩餐会の席で「イギリスでは国王の健康を祝して杯を交わす習慣がある」と言ったため、それに従い行ったことに由来する。
これ以降、酒を入れた杯を掲げ、互いに触れ合わせる儀式として広く行われるようになった。
当初の掛け声は「万歳」であったが、酒を飲み干すことから次第に「乾杯」の掛け声に変わっていき、現代では、酒を飲み干すことよりも、杯を合わせる儀式や、その時の掛け声を「乾杯」と言うようになっている。
乾杯の際に杯(グラス)を合わせる風習は、ヨーロッパの宗教的儀式に由来し、グラスを合わせて音を立てることで、酒の中に宿る悪魔を追い払っていたものだったといわれる。
これが、イエス・キリストや聖母たちに乾杯する風習に変わり、イギリスには宗教的な祈りと死者を追悼する酒盛りの風習として伝わり、いつしか生きた人間の健康を祝福する乾杯となった。
日本で杯を合わせるようになった由来は、お互いの杯を勢いよくぶつけ、杯の中を混じり合わせることで、毒が入っていないことを証明していたからという説もある。
しかし、昔は杯を合わせておらず、客と主人の杯へ同時に酒を注ぎ、同時に飲み干すことで、毒が混入していないことを証明をしていたと考えられている。