乙は、十干の一つで甲に次いで二番目。
「甲乙つけがたい」の「乙」は、「甲」を第一位としたときの二番目にあたることからいう。
邦楽では、「甲」に対して一段低い音を「乙」といった。
江戸時代、この低い音が通常とは異なる調子であることから、普通とは違って「変なさまだ」「妙だ」という意味で、邦楽以外のことについても使われ始めた。
この頃には、マイナスの意味での使用がほとんどであったが、明治時代に入ると、変わっていて「しゃれている」「趣がある」といったプラスの意味で用いられることが多くなった。
一説には、まっすぐな「一」に対して、「乙」は字が曲がっていることからともいわれるが、邦楽の「甲」に対して「乙」の説が有力である。
インターネット掲示板などで見られる「乙」は、「おつかれさま(お疲れ様)」を略した「おつ」を漢字変換して「乙」としただけであり、気が利いている意味からの派生ではなく、乙なものでもない。