折角は、「せっかくお誘いいただいたのに」や「せっかく来たのに」など副詞として用いられることが多いが、本来は「力の限り尽すこと」「力の限りを尽さなければならないような困難な状態」「難儀」の意味で名詞である。
名詞の「せっかく」は、「高慢な人をやり込めること」を意味する漢語「折角」に由来し、漢字で「折角」と表記するのも当て字ではない。
漢語の「折角」は、朱雲という人物が、それまで誰も言い負かすことができなかった五鹿に住む充宗と易を論じて言い負かし、人々が「よくぞ鹿の角を折った」と洒落て評したという『漢書(朱雲伝)』の故事に由来する。
この故事から、「力を尽すこと」や「そのような困難」を表す名詞となり、「力を尽して」や「つとめて」という副詞、更に「わざわざ」の意味でも用いられるようになった。
「わざわざ」の意味の「折角」については、『後漢書(郭泰伝)』の故事に由来するという説もある。
その故事とは、郭泰という人の被っていた頭巾の角が雨に濡れて折れ曲がっていた。
それを見た人々は郭泰を慕っていたため、わざわざ頭巾の角を曲げて真似、それが流行したという話である。
しかし、「折角」が『漢書(朱雲伝)』に由来し、名詞・副詞へ変化したことは明らかであるため、「わざわざ」の意味だけ『後漢書(郭泰伝)』の故事に由来するとは考え難い。