手前味噌という際の「手前」は、「自分のすぐ前」という意味ではなく、「自家製」や「自前」、また一人称の「自分」のことである。
手前味噌の「味噌」は食品の味噌のことだが、現代でも「ポイント」の意味で使われるように、「味噌」には「趣向をこらしたところ」の意味がある。
それは、かつて味噌は各家庭で作るもので、それぞれが良い味を出すために工夫をこらしていたためである。
近世には「趣向をこらしたところ」の意味から、人に自慢する様子にも「味噌」が使われた。
「手前味噌」という言葉は、「手前どもの味噌は……」と、自家製の味噌の味を自慢することから生じたとするのも間違いではない。
しかし、「味噌」という言葉自体に「自慢」の意味が含まれることから、自分を自慢する言葉として「手前味噌」が使われるようになったと考える方が良いであろう。