わさびの語源は、「悪障疼(わるさわりひびく)」の略、「悪舌響(わるしたひびき)」の意味、「鼻迫(はなせめ)」の意味が転じたとするなど、わさびの特長である「鼻につんとくる辛さ」を語源としているが、いずれもこじつけの感が強い。
その他、わさびの「わさ」は鼻に走る辛さを表現したもので、「走る」を意味する古語「わしる」と関連づけ、わさびの「び」を「実(み)」の転といった説があり、他の説よりは自然である。
辛さに関連づけない説では、「早葵(わさあふひ)」の転とする説があり、わさびの葉が葵に似ているからといわれるが、「わさ」の説明が成り立っていない。
また、「山葵」の漢字が見られるのは、平安時代の本草書『本草和名』からで、奈良時代の地誌『播磨国風土記』では「山薑」と書いて「わさび」と読ませており、「葵」を語源とすると時代が前後してしまう。
そのため、わさびの漢字に「山葵」を当てた由来としては、葵の葉に似ていることが考えられるが、「わさび」という音に「葵」を関連づけることは難しい。