マッコウクジラの語源には、漢字で「抹香鯨」と書くように、沈香や白檀などを混ぜ合わせて作った香料の「抹香」に由来する説が二説と、「真っ向」に由来する説が一説の計三つの説がある。
「抹香」の説は、ひとつが、マッコウクジラの腹部にある模様の色が、抹香の色に似ていることからとする説。
もうひとつが、マッコウクジラの腸からは「龍涎香」という香料が採れ、精製前の段階では抹香と似た香りがすることからという説である。
抹香の色と似ているとは言えないため、「龍涎香」の説が有力とされているが、龍涎香は日本ではなく中国やアラビアで珍重されたものであることや、数パーセントのクジラからしか採れないものであるため、「抹香」と結びつけることに疑問の声もある。
「真っ向」の説は、マッコウクジラの特徴である巨大な頭部に由来する。
マッコウクジラは江戸時代に「真甲鯨」と表記されており、「抹香」は当て字の可能性がある。
「真っ向」は元々「額の真ん中」を意味した語で、「額」の意味でも使われており、当て字で「真甲」とも書かれている。
そのため、大きな額を持つクジラの意味で「真甲鯨」となり、のちに「龍涎香」と関連づけられて「抹香鯨」と表記されるようになったというものである。