中国で昔から使われていることわざで、表門で虎の侵入を防いだが、今度は裏門から狼が侵入してきたという意味に由来する。
趙弼の『評史』には、「前門に虎を拒ふせぎ、後門に狼を進める」とある。
福沢諭吉の『文明論之概略』(1875年)では「前門の虎を逐て後門の狼に逢ふが如きのみ」、坪内逍遙の『当世書生気質』(1885〜86年)では「前門に虎をごまかせば後門に狼婆ア」というように、日本でも本来は、さまざまな動詞を含んだ形で用いられていた。
やがて、動詞部分を省略した形がことわざとして定着し、現在では「前門の虎、後門の狼」が省略形であることが認識されなくなっている。
また、最初の災難という意味で、「前門の虎」だけを用いる形も生まれた。