店屋物の「店屋」は、本来、宿駅に併設された物を売る店のことで、飲食店に限定されるものではなかった。
近世に入り、居酒屋や一膳飯屋などの飲食店を「店屋」と呼ぶようになり、そこで作られた物を「店屋物」と言うようになった。
やがて、「店屋物を取る」など「出前」と同様の意味で用いられるようになり、「店屋物」は特に飲食店から取り寄せる食べ物の呼称となった。
「店屋」が「みせや」ではなく「てんや」となった理由は定かではないが、室町時代の国語辞書『下学集』でも「てんや」と読ませている。
なお、近世には「女郎」の意味でも、「店屋物」が用いられている。