元は『源氏物語五四帖』の巻名にちなんでつけられた宮中の女官の名を「源氏名」と言った。
他にも、京都の小路の名を与える「小路名」といった命名法があり、「源氏名」はそのような命名法のひとつであった。
江戸時代に入り、この命名法は武家の奥女中に受け継がれ、芸者や遊女にも用いられるようになった。
ただし、この当時、吉原などの高級遊女には『源氏物語』の巻名に基づいた「源氏名」が用いられ、私娼街の遊女には「おゆき」や「おしま」など、仮名二文字に「お」をつけた「おの字名」が用いられた。
のちに、遊女や芸者の呼び名としての位置づけが強くなり、命名法や職業的な地位に関わらず、風俗産業(性風俗とは限らない)で働く女性の仮名は「源氏名」と呼ばれるようになり、『源氏物語』の巻名に関係ない名前についても「源氏名」と言うようになった。