「ありがとう」は、形容詞「有り難し(ありがたし)」の連用形「有り難く(ありがたく)」がウ音便化した語である。この表現は、様々な意味を含んでおり、元々は「有ることが難い(かたい)」という意味合いで、「滅多にない」や「珍しくて貴重だ」といったニュアンスを持っていました。
例えば、『枕草子』の中で使われた「ありがたきもの」は、「この世にあるのが難しい」という趣旨を表しており、「過ごしにくい」といった意味でも使用されていました。中世においては、自らが得ている貴重で得難いものに感謝する宗教的な要素が加わり、「ありがとう」は宗教的な感謝の表現として使用されるようになりました。そして、近世以降になると、一般的な感謝の意味としても広く普及していきました。
一般に広く知られている「ありがとう」の語源には、ポルトガル語の「オブリガード(obrigado)」説があるものの、実際にはポルトガル人が日本に訪れる以前から存在していた「ありがとう」はポルトガル語由来ではなく、単なる音の類似性に過ぎません。「オブリガード」と「ありがとう」の音が似ているだけの俗説であり、歴史的な経緯から考えると関連性はないとされています。