「十分」と「充分」はどちらも「じゅうぶん」と読まれ、不足がない状態を表す言葉ですが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。元来「十分」が主に使われていましたが、「充足」や「充実」の意味から「充分」という表記も用いられるようになりました。公文書などでは「十分」が標準的に用いられますが、日本国憲法のように「充分」を使用する例もあります。
使い分けに関しては、数値的、物理的に満たされている場合には「十分」を用いることが多く、精神的な満足感を表す際には「充分」が適しています。例えば、「十分に人が集まった」「残り三十分だから、時間は十分ある」という文脈では「十分」が用いられますが、充実感や満足感を表す際には「充分」と表現されることが一般的です。
ただし、これらの言葉には、数値的な意味での使用や精神的な意味での使用に限定される明確な規則はありません。文脈によってどちらの表記を使用しても間違いではないため、意味が伝わりやすい方を選ぶことが重要です。