企てるの古形は「クハタツ」で、平安中期の『源氏物語』にも見られる語。
「クハタツ」の語構成は、「クハ」+「タツ」。
「クハ」は「くるぶしから先の部分」や「足の裏」を表し、「タツ」は「立つ」で、「クハタツ」は足を爪立てる(つま先で立つ)ことを意味する語であった。
つま先立ちすることは、遠くを見る、先を見通すなどの意味を含むことから、もくろむの意味が生じた。
「クハタツ」が「もくろむ」の意味で定着すると、「つま先で立つ」の意味は、やや遅れて現れた「爪立つ」に譲る形となった。
企てるの語源には、田畑を耕す農具の「鍬」+「立つ」に由来する説もある。
田畑を開くためには、まず鍬を打ち始めるところから、もくろむ意味が生じたというものである。
しかし、古形の「クハタツ」が「爪先立つ」の意味で用いられた例はあるが、開墾の意味で用いられた例が見られないことから考えがたい。
企てるの由来と直接関係するものではないが、漢字の「企」も「爪先立つ」を意味する。
「企」は「人」と「止」を合わせた字で、「止」は「足」のこと。特に、つま先をいい、人がつま先立ちしている形を表している。
背伸びして遠くを見ようとするところから、「企」は「くわだてる」の意味も表すようになった。
漢字の「企」には、「爪先立つ」や「くわだてる」の意味のほか、「切望する」「待ち望む」といった意味もある。