私の語源は、「われ」「わが」などの「わ」に関係すると思われるが、それ以上のことは分かっていない。
「わたくし」は中世前期頃まで、「公(おおやけ)」に対する「個人」の意味で用いられ、一人称の代名詞として用いられ始めたのは、中世後期以降である。
「わたし」は近世以降に見られる語で、現代では男女共に用いるが、近世には女性が多く用い、特に武士階級の男性が用いることはなかった。
「あたし」や「あたい」は明治以降に多く見られる語で、「あたい」は主に東京下町の花柳界の女性や子供が用いた。
「わたくし(watakushi)」の「ku」が省略され、くだけた言い方になったのが「わたし(watashi)」。
「わたし(watashi)」の「w」が省略され、更にくだけた言い方になったのが「あたし(atashi)」。
更に「あたし(atashi)」の「sh(s)」が省略され、くだけた言い方になったのが「あたい(atai)」で、「私」の語は、音の省略によってくだけた言い方になる典型的な例である。